《MUMEI》

.



「………」




俺は棚に手を上げたまま、

隆之の方を見ることもなく

息をするのさえ、忘れてて




「でさ…。佑二?」


「………ああ」



俺の脳がようやく隆之の声を認識して


俺は深く呼吸してから

隆之を振り返った

心臓が何か強い感情にバクバクしてる。

でもそれがなんだかは分からなくて。





「…どうした?顔、真っ青…」

「隆之」



俺は落ち着こうと

胸いっぱいに息を吸おうとして



上手く呼吸できずに咳き込んだ



隆之は「大丈夫か」と俺の背中を叩いて、言った





「そのムービー…あるぜ」


「…な…ゲホッ…」


まだむせたまま俺が顔を上げると、隆之は伏せがちだった眼を俺に向けた



隆之の眼は淡蒼だ



「俺さ、知ってるんだ」

前へ |次へ

作品目次へ
ケータイ小説検索へ
新規作家登録へ
便利サイト検索へ

携帯小説の
(C)無銘文庫