《MUMEI》

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「わたしは進路指導室に行く途中!で、あんたがここでボーッとしてるから、わざわざ声かけてあげたのよ!」


恩着せがましくまくし立てた彼女をチラッと見遣り、わたしは、あっそ!と素っ気なく吐き捨てた。

「つーか、声かけてなんて頼んでないし。ナンパ代、徴収するわよ?」


わたしの可愛げない態度に呆れたのか、千影は深いため息をついた。


「あんたこそ、こんなとこで何してんのさ。いつもなら、さっさと帰るくせに」


千影の問いかけにわたしはゆっくり振り返る。そして半眼で彼女を見つめ、中庭の前にそびえ立つ特別教室棟を指差した。


「…問題児待ちなの」


千影は眉をひそめて、問題児?と繰り返すと、わたしの指先をなぞるように、特別教室棟を見上げた………



そのとき。



「マジうぜぇ!!とっとと失せろッ!」



突然、目の前の校舎から男の怒号が響き渡り、続いて何かをどこかに激しくぶつける音が聞こえた。


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