《MUMEI》

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素性を隠し、『フツーの生徒』を装って、安穏(?)とした学生生活を送る義仲の監視役としてこの学園に潜り込んでいるらしいけど、

今日みたいに義仲にウザがられて、ボコられることも、しばしば。


ホントに、かわいそうなひとなのだ。



川崎先生はヨタヨタとわたし達の方へ近づきながら、義仲さん…と、もう一度呼び掛けた。


「まだ、話は終わって…」


言いかけたのを、義仲は、黙れ、と冷たく遮る。


「くだらねー話ならオヤジにしろ!俺を巻き込むな!」


あばよ!と続けざまに言うなり、義仲はわたしの手を取って、千影と川崎先生をその場に残し颯爽と走り出す。


走り去るわたし達の後ろから、川崎先生の、義仲さん!?と呼ぶ声だけが、ひと気の無い放課後の中庭に虚しく谺していた。



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