《MUMEI》

 対するのは、こちらも何本ものコードを生やした、機動隊が使いそうな透明な盾。それが土台にガッチリ固定されている。

 いったい何のテストをしている所なんだろうか。

 ワケも解らず4人に習って事の成り行きを見守っていると、土台のランプが赤から緑に変わった。

『はぁっ!!』

 スピーカーから隣の女性のものと思われる気合いの入った声が響き渡る。

 同時に向こうの部屋で、手にした棒を盾に向かって突き立てた。


 ギャリィッッッ!


 金属同士が擦れあうのとはまた違った耳障りな音が流れ、先端を尖らせていない細い円柱の棒が、薄い透明な盾を軽々と貫いた。

「まさかアクリルの30倍の対衝撃性を誇る、10ミリ厚のポリカーボネート製タクティカルシールドを貫通するとは……」

 白衣を着た見た目が一番若いひょろりとした男性が洩らした、説明臭い独り言が耳に入る。

「あ〜〜……ダメだね、ありゃ」

 間髪入れず櫻井さんが他人事のような呟きを漏らすのも耳に入る。

 そして櫻井さんの呟きが現実になった。


 ビキィィィッッッ!!!!


 限界を迎えたのか破滅的な音を立てて、女性の持っていた棒に幾筋もの亀裂が走ると、見事なまでにバラバラに砕けてしまった。

「あぁぁっ!」

 その無残な結果に、白衣を着た一番小柄でメタボな男性が悲鳴を上げる。

『取り敢えず結論から言わせてもらうと、どれもこれも実用レベルには、まだまだほど遠いわ』

 砕けた棒切れの残りをその場に棄てながら、女性が辛辣な言葉を並べ始める。

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