《MUMEI》

睨み付ける瀧に、


「ハハッ、そう睨むな、昔の事だろう?」


茶化すように言った後、


「あまり…生意気な態度は良くないぞ?瀧。」


不意に声のトーンが落ち、前髪の隙間から紫紺の鋭利な目が瀧を見据えた。


「―ッ!」


反射的に瀧の体は硬直した。
その様子を見て、満足したのか、


「まぁ心配するな、非常事態が起これば私が何とかしてやるさ、これでも《保持者》の端くれだ。」


博士は常の飄々とした態度に戻った。


「え、SC持ってらっしゃるんですか?」


「言ったろう?端くれだ。」

「よくゆーぜ…。」


毒づく瀧の膝を綾乃に見えないように蹴り込み、博士は続けた。


「さぁ、では今から実験を始めるぞ。」

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