《MUMEI》
プロローグ
  
「どうしたんですか克哉さん?」

 僕がぐずっていたくるみちゃんを抱っこしてあやしていると、克哉さんが近くに来て僕の髪に触れてきた。

 短く少しツンツンしていた髪も伸びてきて、染めていた色も元の黒髪っぽく戻っている。

「髪伸びてきちゃいましたね、切った方がいいですかね?」
「そのままでいいよ…」

 克哉さんはそう言うと、自分のしていた眼鏡を僕にかけてきた。

「ん…似合いますか?」

 少しぼやける視線で克哉さんの方を見ながら、くるみちゃんの背中をトントンとリズミカルに叩く。

 克哉さんはそんな僕らをじっと見つめたあと、僕とくるみちゃん二人ごとゆっくりと抱きしめてきた。

「ん〜…にーたん?」
「…克哉さん」

 僕の少し長く伸びた髪を撫でながら、克哉さんは何か意味あり気な表情をしていた。
  

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