《MUMEI》
相談
  
「克哉くん…キミ最近保健室に来すぎだよ」
「はい」

 克哉君は悪びれる様子も無く、ほぼ毎日保健室へ立ち寄って来るようになっていた。

(確かに来て欲しいとは…ちょっとは思ったけど…)

 保健室の窓辺にイスを置いて、いつもそこで日本語かドイツ語の本を読んでいた。

 その窓から差し込んでくる光が、彼の金色の髪と白い肌を照らしている。

(全く…絵になるんだからたまんないよなぁ…)

「悪い所は無いんだろう?見た所…元気そうだし」
「元気そう…ですか」

 ちょっとの注意のつもりで言ってみたんだけど、さっきまで普通どおりだった克哉君の元気が急に無くなってしまった。

「…どうした?」

 生徒会長でもある模範的な彼が、そろそろ授業が始まる時間だというのにじっとしたままイスから立ち上がろうともせず、俯いたまま何も言わなくなってしまった。

 これは…。

「何か…話したい事があるのかい?」
「……はい」

 彼のクラス担任の先生に連絡を入れると、彼と正面に向かい合ってとりあえず相談を聞いてみる事にした。

「克哉君…どうした?」

 僕は克哉君の正面に座り、彼の動向を伺った。

 あの、いつもはしっかりとした彼なのに…今はイスに座り下を向いたまま悩んでいる様子だった。

 そう、青春は悩むものなのだ。

「…最近…自分の気持ちがどうにも出来なくて…イライラするんです…」
「どうにも出来ないって…解決出来ない困難にぶち当たってるのかな?」
「…はい」

 そうそう、このぐらいの年齢の子にならよくある話だ。

 でも、そう言って子供の話を聞かないままにすると、彼の精神衛生上良くないので、ココは彼に言いたい事を全部言ってもらって、僕はそれを全部聞いてあげる。

 それがカウンセリングってものなんだな。
  

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