《MUMEI》

(え?”やっぱり”って事は、違うのか…あぁ…あるとは思ってたけど)

「…まぁ…ど…同性に恋しちゃいけないって法律は無いしね〜…」

 明らかに動揺している声を察したのか、克哉君の顔が曇ったようなカンジがした。

 あ…あれ、そういえば克哉君のお父さんは外国の人だから、外国って言えばキリスト教とかだよな。

 キリスト教だと、同性愛とかそういうのがダメだったような…。

 そういう事に疎いから、何でダメなのかは事情が全然分からないけど。

(もしかして…知らないウチにマズい事言っちゃったのかぁ…)

 僕は心配になって克哉君の顔を覗き込むと、その瞳が若干潤んでいるように見えた。

(え…泣いて……)

「恋を…してもいいんですか?」

 俯いていた克哉君が顔を上げ、僕を見上げながらそう聞いてきた。

「う…うん…いっぱいすればいいと思うぞ、何事も経験だからな」

 当たり障りの無い答えを返してみたが…。

 でも、勉強だって運動だって経験から学ぶものだから、恋愛や人間関係だって経験だ。

 そう思って言ってはみたが、克哉君はジーっと僕を見つめたまま微動だにしていなかった。


 泣いている姿は可愛らしいのだけど…。

 そんなに見つめられると恐いなぁ…。

 やっぱり怒ってんのか?


「先生!」
「お…おぉ…!」

 急に克哉君がイスから立ち上がったので、僕もつられて立ち上がってしまった。

 だって…。

 身長は僕よりも少し高いぐらいだけど、体格なんか全然違うし威圧感があって驚いてしまったのだ。

(あぁ…何やってるんだ、自分///)

 冷静にならなきゃいけないのに、子供にビビってどうするんだ。

「な…何だ?」

 彼に…そういう意味じゃないが見下されて、すっかり僕はライオンに睨まれた小動物のようになってしまっていた。

 それともこの場合は”蛇に睨まれた蛙”とでも言うのだろうか。

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