《MUMEI》
保健室 (克哉サイド)
  
 授業中に怪我をした奴を担いで保健室に連れて行った。

 俺は保健委員ではないんだが…こいつが突然俺にぶつかってきて勝手に転んで倒れたのだ。

「いてぇよ〜このベルリンの壁〜」
「何を言ってるんだ…お前が勝手にぶつかって来たんだろ…」

 何故か俺が怪我させたという事になって、理不尽に思いながらも保健室に運びそいつを置いてったらさっさと帰るつもりだった。

 保健室に行くと、そこには今年転任してきたと言う前の老人とは全く違ってとても若い養護教諭が忙しそうにウロウロしていた。

「さっきも同じような怪我した子が来たなぁ…さすが男子校」

 身長は俺の目線の下くらいで、見た目は黒髪に黒い瞳で髪はボサボサだけどふわりとしていた。

 その姿はまるでネコのチンチラのようだった。

「あっ…は…ハーィ…ハワユーι」

 その教諭は俺を見るなり驚いたような顔をして、英語圏の…多分アメリカ人留学生か何かだと思ったのか英語で話しかけてきた。

 …この髪の色とこの顔だからしょうがないんだろうな。

 フランス人のような気位の高い奴だったら ま ず 答えないだろうが、俺は彼に”こんにちは”と丁寧に日本語で話しかけた。

「に、日本語喋れるんだね///」

 小さな顔に似合ってない眼鏡がずり落ちて、いかにも鈍くさそうだったが手先はササっと器用に動いていた。

 それが俺と彼の出会いだった。


 それからというもの、彼を見つける度に視線でその姿を追っていた。

 目で彼を追っている…それに気付いたのは彼の行動パターンを覚えて彼の帰りを校舎の裏からこっそりと彼を眺めていた時だった。
  

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