《MUMEI》 嫁が新郎をお姫様抱っこして登場なんて、派手なパフォーマンスもあって楽しい披露宴だ。 ただ、一つ気になるのは新郎の友人席から俺達は入り切らなくて、楠の仕事関係の人と同席だったことである。 向かいはただ者じゃないオーラだ……二郎と俺は緊張で少しぎこちない。 まず、黒い着物で式に来ることが大物だ。 横の人もスーツだが、年齢不詳で男か女か分からないし、学生らしき若者は何故楠の仕事関係の席に座っているのか……謎は深まるばかりだった。 「アレルギーですか?」 二郎が、メインの肉が苦手で手が止まっているのをキレーな人に指摘された。 声色的には男のようだ。 「筋張った触感が苦手で。」 「必要な栄養ですよ、見てると少し痩せすぎているようですので。」 板みたいに小柄で細い、あんたも人のこと言えないでしょうよ。 「これ、太れない体質なんすよ。」 フォロー入れてみたり。 「何も無くても病院に行って検査することも大切ですよ。」 妙に心配されている。 「……はい。」 「モモは火サス好きだからな。」 横でぽつりと囁く学生に驚いた、二郎に気付いてたようだ。 演技の時と普段の二郎は大分雰囲気が違うのだが。 「俺の付け合わせをやろう。貴方のもください、貴方のも。」 肉の横の人参やらをかき集めて二郎の皿に置いてく、キレーなあんちゃんや学生、黒い着物の人からも勝手にかき集める。 「たんとお食べ。」 付け合わせを山盛りにした皿を二郎に進めた。 マナーの悪さで二郎に腿をつねられる。 キレーなあんちゃんは呆気に取られているようだった。 「彼は他の人よりフレンドリーというか……ごめんなさい。」 爪先も蹴られた。 別に二郎がフォローする必要あるのか? 「気にしないで、二人ともその程度では動きませんから。」 キレーなあんちゃんが笑うと後ろの楠の嫁の道場の門下生辺りがちらちら見てくる。 「まあ、俺は気が短い方だな。」 高校生が笑うと後ろの門下生は静かになった気がした、凄みのある高校生だ。 「飴ちゃんあげるから許してな……?」 これは、子供の大好きな飴ちゃんで買収するしかない。 小腹が空いた俺が二郎に催促して貰ったものの一つなんだけれど。 「あー!そろそろだよ、七生!」 飴を握らせてから、二郎の声に反応して席を立つ。 新郎の友人として一曲歌うことになっているからだ。 楠の妹と二人で歌うことになってたが、予定が合わずに一発本番だった。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |