《MUMEI》

―くそっ、この部屋とアイツの顔見てると…嫌なことしか…―


瀧にとっては五歳から預けられたラボは恐怖の対象だった。

千影が所長になり、ラボから正式に出されたのは約10年前、それまでの10年の月日実験と戦うための教育は繰り返し行われた。



「…き、瀧?」


はっ、と我に帰ると、自分を心配そうに見上げる綾乃がいた。


「あ、いや、何でもねーよ。」


「嘘、顔色悪いよ?」


「へーきへーき。」


そう言いながら綾乃の頭をポンポンと叩く。


「なんだ、流石に手が早いな、もう落としたのか?」

茶化すように言うベリアに

「違うっつーの!」
「違うわよっ!」


同時に否定した二人を可笑しそうに見つめていたが、

「さて、では瀧には退場してもらおうか?なぁに、今日は軽い検査だ心配するな。」

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