《MUMEI》

「そうだな…」

克哉さんは余裕の笑みを浮かべながら、トリスタンさんと一緒に笑っている。

「ぁ…」

僕は、仲の良い二人を見るのが辛いからすぐにこの場から逃げようと思ったのに…。

「……ぅ///」

玄関の方へと小走りで駆け出そうとした僕の腕を克哉さんは掴むと、やれやれ…というような表情で僕を見ていた。

「アキラ!」
「はいっι」

肩を掴まれ正面を向かされると、あの怖い顔でじっと見つめられてしまった。

「分からないのか、私にはお前だけだ…」
「は…はい…」
「脅してどうすんのよ…」

トリスタンさんは呆れたように克哉さんの頭を小突くと、克哉さんはいつもの克哉さんに戻っていた。

「大丈夫よアキラ、コイツとヨリを戻す気は無いから」

そう言うとトリスタンさんは僕をギュッと抱きしめて、まるで子供をあやすように頭を撫でてくれた。

「ぁ、は…ぃ///」

抱きしめてくれたトリスタンさんからは、とても良い香りがした。

「…元々戻すようなヨリなんか無いぞ」
「いってらっしゃ〜い♪」
「い、いってきます…ι」

トリスタンさんは不安だった僕の気持ちとか、ちゃんと分かってくれていたようだった。

だったら何で僕の目の前であんな事してたんだろ…夫婦だったらあの程度の事も寛容になれって事なのかな。

それか…人のものを取って面白がるタイプの人なのか?

それに、克哉さんと幼なじみなのは知ってるんだけど、どうしてあんなに仲が良いのか…とか。

もっとトリスタンさんの話、聞いてみたいな。




克哉さん達の準備が出来るまでくるみちゃんを足止めしておく、という事で幼稚園のクリスマス会終わりの帰りに、近くの公園で遊んでいった。

もう冬休み期間だけど、クリスマス会の今日だけは幼稚園に来るように言われていて、その会に僕らもも参加するのかと思ってたけど、親は帰るように言われてしまった。

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