《MUMEI》
梧城の差し金
「まあ、良く似合ってるじゃない。」


「お前…後で覚えとけよ。」


今の将貴は由里香によって、
せっかくセットして来た髪をぺったんこにされ、

黒縁のだて眼鏡を付けさせられていた。


「昨日の夜、優しくしただろ?」


「それとこれとは別でしょ!

まあ、良かったけどね。」


由里香は昨日の夜のことを思い出したのか、
上機嫌で笑う。


「それに梧城さんの頼みよ?」


「は?」


「梧城さんが是非将貴をダサい格好にしてくれって。」


「う、うそだ。」


「ホントよー。

何なら今連絡取って見る?」


「や、いい。

…分かったよ。

これで登校してやるよ!」


将貴は観念したのか、
眼鏡を掛け直した。


「うん、学校頑張ってね。」


「ったく大学生はいいよなー。」


由里香が見えなくなったところで、
将貴は深い溜め息をついた。

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