《MUMEI》

「でも二年の時は英語が得意だったのよね。三年になってからは数学の方が成績が良くなってくれて、嬉しいわ。何なら理数系の大学の…」

「嬉しい、ですか?」

突然あたしの言葉を遮り、彼が真剣な言葉を出した。

「えっええ、もちろん。あたしの担当する教科だし、数学を好きになってくれるのは素直に嬉しいわよ」

…キライな子の方が多いから。

「…なら、先生はオレに好かれたら、嬉しいですか?」

「えっ? そりゃあ…嫌われるよりは、好かれた方が嬉しいわよ」

「そうじゃなくてっ…!」

彼は前髪をぐしゃっとかき上げ、真っ直ぐにあたしを見てきた。

あっ、コレはヤバイ。

長年、教師をしている勘がささやいている。

話題を変えろ、と。

「オレ、先生のことが好きです。一人の女性として、愛している」

「っ!?」

あまりの直球な言葉に、呼吸どころか心臓まで一瞬止まったわよ…。

でもすぐに冷静に戻らなきゃ!

間を空けちゃダメ。

「そう、あなたの気持ちはとても嬉しいわ。だけどあたしはあなたより15も年上だしね?」

…言ってて、自分でダメージを受けるな。

「でもオレはもう結婚できる歳です」

結婚ときたか…。

「でもご両親の承認が必要よ? 許してくれないわよ」

「説得します! 何年かかっても!」

その間に、キミは卒業するんだけどな〜。

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