《MUMEI》

…正直なことを言うと、彼のような生徒が今までいなかったワケじゃない。

でもみんな若かったし、高校を卒業したら、自然と離れていった。

男子校の中での若い女教師。

目立つ存在であるからこそ、今まで教師としてというより、姉のように接してきたのに…。

「でもホラ、教師と生徒って言うのは、ねぇ?」

「オレはあと、半年も経たないうちにこの学校を卒業するから、それも効かない」

ああ、確かに…って、説得されちゃダメだってば!

「でっでも、あなたはまだ、進路決めてないじゃない。ハンパな気持ちじゃ、やっぱり周囲は認めてくれないわよ?」

そう言うと、彼の表情がくもった。

…おや? 妙なところでスイッチを押しちゃったかな?

彼は俯いたかと思うと、しぼり出すように言葉を出した。

「…オレが学生でいるうちは、先生のことしか考えたくなかったから…」

「…はい?」

「だから他のことなんて、考えたくなかった。先のことを考えれば、それは先生のいない生活のことだったから…」

ああ…。

確かに進路を考えるということは、ここを卒業してからどうするということを考えること。

その時、あたしは彼の側にいない。

「…だから進路先を考えていなかったの? 子供の考えねぇ」

ため息まじりに言うと、ムッとしたように顔を上げた。

「ガキだよ、オレ。先生より15も年下だもん」

ぐさっ★

きっ気にしていることを、サラッと言いやがって。

このガキがっ…!

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