《MUMEI》

少し赤い顔をしている彼を見ると、五年前の姿と重なる。

「愛してますよ、先生。五年経っても、オレの気持ちは変わりませんでした。―今度こそオレの本気、受け取ってくれますか?」

「なっ! かっ変わらなかったの?」

「変わるわけないじゃないですか。オレは本気なんですよ? 学生の時から、ずっとあなたに夢中だったんですから」

そう言って優しく抱き締めて、頭を撫でてくれる。

「あの頃のオレ…本当にガキでしたね。自分の気持ちでいっぱいいっぱいで…。先生を困らせるだけの、バカな子供でした」

「…うん。そうね」

素直に頷くと、彼は苦笑した。

「先生と離れて、頭が冷えました。そこからはずっと、先生に相応しくなろうと頑張ってきました。今度はオレが先生を支えようと思って」

彼はあたしの頬を両手で包み、顔を近付けてきた。

あたしは目を閉じて、彼の唇を感じた。

あの時は涙の味がした。

でも今は、とても甘い…。

「…社会人としてはまだ一年目ですけど、先生を支えられるぐらいは成長したつもりです。先生、返事は?」

「あなたって、ホントにバカね」

彼の手に顔を埋め、あたしは言った。

「…好きよ。一人の男性として、あなたのことが好き」

「その言葉…五年も待ちましたよ」

嬉しそうに微笑んで、彼は額と額を合わせた。

「でももう待ちません。今すぐにでも、結婚してもらいますよ?」

「相変わらず強引なところは変わっていないのね。でもあたし、教師は辞めないからね」

あたしの言葉に、彼の表情がくもった。

「やっぱり…辞めてくれませんか」

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