《MUMEI》 不自然な装い校舎へ入ると、 わざわざ先生が出迎えてくれた。 「やあ、君が黒澤将貴君かい?」 「はい。」 普段ならタメ口をきくのだが、 ぐっと我慢した。 これも梧城さんから言われたことだ。 とにかく地味に、優等生を装えと。 全くそんなことに縁のない将貴は、 悪戦苦闘していた。 「校長室へ案内するから、 ついて来てくれ。」 「あざす。」 前屈みになって、頭を下げる。 ヤクザ社会で良く見られる、 特有のお辞儀だ。 それを見て、先生は目が点になった。 「あの、黒澤君?」 「なんでございます?」 「変わった礼の仕方だね。 敬語も少々変わってるし。」 ズバリ指摘され、将貴は苦笑いを浮かべて否定した。 「い、いや…やっぱり転校初日となると緊張してしまって……ア、アハハ…。」 柄に無く焦ったしまった自分に、 どうしようもない嫌悪感を抱いてしまった。 前へ |次へ |
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