《MUMEI》
不自然な装い
校舎へ入ると、
わざわざ先生が出迎えてくれた。


「やあ、君が黒澤将貴君かい?」


「はい。」


普段ならタメ口をきくのだが、
ぐっと我慢した。


これも梧城さんから言われたことだ。


とにかく地味に、優等生を装えと。


全くそんなことに縁のない将貴は、
悪戦苦闘していた。


「校長室へ案内するから、
ついて来てくれ。」


「あざす。」


前屈みになって、頭を下げる。


ヤクザ社会で良く見られる、
特有のお辞儀だ。


それを見て、先生は目が点になった。


「あの、黒澤君?」


「なんでございます?」


「変わった礼の仕方だね。

敬語も少々変わってるし。」


ズバリ指摘され、将貴は苦笑いを浮かべて否定した。


「い、いや…やっぱり転校初日となると緊張してしまって……ア、アハハ…。」


柄に無く焦ったしまった自分に、
どうしようもない嫌悪感を抱いてしまった。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫