《MUMEI》 愛しいひと. わたしが『モト』―――元治(モトハル)と初めて出会ったのは、もう9年も前のこと。 わたしはまだ高校1年生で、元治は同じ高校の2コ上の先輩だった。 入学して間もなく、わたしは元治の姿を学校で見かけて、一目惚れしてしまった。初恋だった。 毎日彼の教室へ行き、無邪気に笑う彼の姿を覗き見たり、廊下ですれ違う時に思いきって挨拶してみたり、バスケ部に所属していた彼の試合を観戦したり、とにかく、元治と何らかの形で接点を持っていたくて、わたしは必死だった。 それでも、わたしは元治と簡単に付き合えた訳ではない。 元治はよくモテた。 背も高いし、顔立ちも整っているし、何よりその明朗な性格と、屈託ない表情が、わたしを始め、その他多くの女の子を魅了していた。 わたしがどんなに頑張ってアピールしても、元治の隣にはいつも別の女の子が歩いていた。決まってモデルみたいなきれいな女の子だった。 わたしは、そんな元治と女の子が仲睦まじく過ごす姿を、遠くから眺めているだけの日々が続いた。 そうこうしているうちにすぐに1年が過ぎ、元治は高校を卒業してしまった。 自分の想いを告げることが出来なかった後悔だけが、わたしに残った。 元治がいなくなった学校は、輝きを失ったようにつまらなく、退屈なものにしか感じられず、 他に好きな人も出来ないまま、1ヵ月後に卒業を控えた、ある時、 転機は突然、訪れた。 . 前へ |次へ |
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