《MUMEI》

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確かあの日は、3年生は自宅学習中で、わたしも家でのんびりしていた時、クラスメイトだった亜美から、電話があった。


『今晩、皆で集まって飲み会するんだって。皐月も行かない?』


話によれば、卒業の前祝いを学校の仲間達と行うということだった。わたしはそういった会合が苦手で、折角の誘いも少し面倒臭く思い、上手く断る文句を考えていたのだが、


『仲良かったOBOG達も来てくれるらしいよ。もちろん、元治先輩も』

続けざま放たれた亜美の言葉を聞き、わたしが二つ返事で了承したのは言うまでもない。

亜美はわたしが元治のことを好きだったのを知っていたから、その情報を前もって教えてくれたのだろう。

かくして、わたしはその飲み会とやらに参加することとなった。


期待に胸を踊らせて、指定された居酒屋に亜美とともに訪れた時には、すでにたくさんの仲間達がパーティーを始めていた。

やかましく盛り上がるグループの中、一際目立っていたのは、もちろん、元治だった。

元治は輝くような笑顔を浮かべながら、未成年だというのに後輩達と酒を飲んでは大声をあげてはしゃいでいた。


そんな相変わらずの元治を横目で見ながら、再確認した。



…あぁ、

やっぱり、好きだなぁ。

わたしは今でも、元治のことが、好きなんだ。



時間が流れていくと、自然に皆がそれぞれの席を交換し、他の人達と話始めたのを見計らって、

わたしも自分のグラスを手に取り、さりげなく、元治の隣に近寄っていった。


「…こんばんは」


彼に呼びかける声が、震えてしまった。緊張して上手く笑えているのか、自分でもよく判らなかった。



元治はわたしの声に気づき、ゆっくり振り返った。



その目が、わたしの目と合わさった瞬間、



その一瞬で、わたしは元治に、否応なく、引き込まれてしまったのだ。



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