《MUMEI》 「ソコでくたばってる野郎はテメェでどうにかしろ。俺らは帰る」 また井上を抱き上げ、室内に乗り上げたままのバイクへと乗せてやると お嬢様へは最早一瞥すら寄越さずそのまま外へ 出るなり井上へとヘルメットを被せ、そして走り出していた 「ね、清正」 「何だ?」 走る最中の藤田へ、井上はしがみ付く腕に力を更に入れながら 「どして、あの場所わかったの?」 電話を常時通話にしていたので井上がどのような状況下にあったのかは知ることができただろう だが、居場所まではどうやって知ることが出来たのかと 井上は小首を傾げる 「……テメェに持たせた携帯、それGPS付きだ」 その機能を駆使し、居所を調べたのだ、と 背越しに聞く藤田の声はやたら疲れている様だった 普段から若々しさに欠ける藤田だが、この時はソレに輪をかけて老けこんで聞こえる 「……ありがと、清正」 「あ?何か言ったか?」 聞こえるか聞こえないか位の小声での感謝 聞こえてなかったのか聞き返してくる藤田へ 井上は藤田の背に顔を埋めながら首だけを横へ振って返した 「そか。ならいい」 困った風に笑いながら それ以上聞く事もしないまま、藤田はアクセルを踏み込み 家路を急いだのだった…… 前へ |次へ |
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