《MUMEI》

公民館が開くまでの時間、三人はとりあえずの準備をすることにした。
ユウゴは銃の弾数を確認して、映画などでよくあるようにパンツと背中の間に挟んだ。
ケンイチは鞄の中から何か取り出すと、薄ら笑いを浮かべてジャージのポケットに入れている。
その様子が不気味に思えるのは、彼の着ているジャージ効果だろうか。
そんなことを思いながらユウゴは織田に視線を移す。
彼は何をするでもなく腕を組み、ただぼんやりと街を眺めているようだった。
頭の中で計画を練っているのだろう。
なんとなく声をかけることができず、ユウゴは今からしなければならないことを頭の中で繰り返しイメージすることに集中した。
しばらくして、公民館の中から老齢の男が現れた。
彼は入口のドアを開けるとキョロキョロと辺りを見回し、再び中に戻っていった。
ユウゴはしゃがみ込んでいたケンイチと隣に立つ織田に視線を向ける。
二人もまたユウゴを見ると、無言で頷いた。
「ケンイチ、あれ出せ」
立ち上がったケンイチは「は?」と素っ頓狂な声を出す。
「あれだよ。トランシーバー。昨日奴らのビルの前で使っただろ」
ユウゴの言葉にケンイチは「ああ、あれか」と頷き鞄に手を突っ込んだ。
ガチャガチャとまるで子供がおもちゃ箱を漁っているような音が聞こえてくる。
ときどきガチッと固い音も混じって聞こえる。
その鞄の中に頼みの綱である武器が全て入っているのかと思うと不安になってくる。
「おまえさ、もうちょっと丁寧に扱えよ」
思わずユウゴは口を出したのだが、ケンイチは聞こえていないのか、聞こえないふりをしているのか「ほい」とトランシーバーを投げて寄越した。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫