《MUMEI》 「先生、お先にどうぞ。僕を踏み台にして下さい。踏み付けて、さあ!」 志雄君は気の回せる良い子だ。 「そうか、悪いな……」 楠先生は志雄君に上る。 「――――そりゃあ!」 変な音をたてて、楠先生が横転する。 志雄君は楠先生を振り落とし、踏み付けた拍子に落とし穴を駆け上がった。 「鬼畜だな、渡部……!」 螢さんもそう言いつつ先生を踏み付けて落とし穴から出てゆく。 「せんせー!めりこんでる……!」 どちらかといえば、頭が地面に突き刺さっている、先生の足を引っ張ったがびくともしない。 「先生はいいから行くんだ……ご飯抜きになるぞ。悪いけど今回ばかりは自分の身が大事だ、お前もさっさと探しに行けよ!じゃあな!」 ボールの飛んだ方向へ二人は駆けて行く。 先生……! 悔しいけれど、今の僕じゃ力が足りない。 必ず後で助けに行くことを誓い、這い上がる。 前へ |次へ |
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