《MUMEI》

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わたしの声を聞いて、亜美はただならぬ気配を感じたのか、『どうしたの?』と、打って変わって神妙な声で尋ねてきた。

『何かあった?話、聞くよ!』

そう言って彼女は、近く、高校の同窓会が開かれることを、立て続けに教えてくれた。彼女は幹事を任されていて、その出欠の確認の為に、今、わたしに電話したのだということも。

『皐月もおいで。ちょっと、ゆっくり話しよう』

言い聞かせるような亜美に、わたしは少し渋った。

「『ゆっくり』って言っても、亜美ちゃん、幹事でしょ?忙しいじゃない」

『んなもん、どうでもいいよ!別に仕切らなくても、皆、勝手にドンチャンやるって!』

「でも、何か悪いよ…迷惑ばっかかけちゃって」

『なーに水臭いコト言ってんの!今さらでしょ、い・ま・さ・らッ!!』


心配してくれた彼女に感謝して、わたしは同窓会に出席する旨を伝えた。


電話を切る前に、


『あんまり無理しないで。あんたはそんなに強くないんだから』


さりげなく、そんな言葉を添えられた。


携帯を閉じた後、わたしは深いため息をついた。


一体、どうすればいいのか、判らない。

誰かに話を聞いてもらいたい。わたしが進むべき道を教えてほしい。


携帯を握りしめながら、もう、自分独りの手には負えない所まできてしまったのだと痛感していた。


******



―――亜美から電話があった、その夜、



いつものように、隆弘から電話があった。

携帯が鳴り出したのと、ほぼ同時に通話ボタンを押す。

「…お疲れさまです」

すぐにそう言うと、隆弘は驚いた。

『電話、出るの早いね!ビックリした!』

隆弘の台詞を聞き、当たり前だ、と思った。

そろそろ電話がくる時間だと気づいてからずっと、携帯を手の中で握りしめていたのだから。

もちろん、そんな話はしないで、「たまたまですよ」と素っ気なく返した。

「メール打ってる途中だったんです」

適当な嘘をつくと、隆弘は納得したようだった。逆に、申し訳なさそうな声を出す。

『ごめん、邪魔しちゃって』

「いいえ、たいした内容じゃないし」

わたしがそう言うと、彼は声の調子を明るくして、『今日も疲れた〜』と、さっそく仕事の愚痴をもらす。何やら今日は、大きなクレームがあったらしく、あちらこちらに奔走して、一日中頭を下げて回っていたそうだ。


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