《MUMEI》

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「最近、元気ないね?」



ラボで仕事をしていると、同僚がふと、そんなことを言ってきた。わたしは顔をあげ、デスクの脇に立っている彼女を見上げる。

わたしの目を見つめながら、彼女は首を傾げた。

「いつもボーッとしてるし、この前も、レポート添削、間違えたんだって?」

わたしは彼女を見つめ返したまま、瞬いた。

先日、いつものように生徒が提出したレポートを添削したのだが、わたしが担当したレポートの内、いくつかの文章の間違いを直すのを見落としてしまった。講師が最終チェックする際、それに気づいたので良かったものの、後でこっぴどく叱られることとなった。

今までわたしは、そんなミスを起こしたことが無かったので、自分自身、信じられなかった。

「山本さん、いつも完璧なのに、珍しくない?」

同僚に言われて、わたしは笑って、「そんなことないよ」とはぐらかす。

「結構、テキトーにやってるから」

「そんなことないでしょ。誰よりも丁寧に仕事してるじゃない」

「買いかぶり過ぎですって」

彼女から目を逸らし、適当に返事をしながら、添削のペンを走らせた。


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