《MUMEI》

『白、泣かないで』

『…はい』

『白、笑って…』

『…っ、はい』


最期の願いだからと
愛しいヒトは微笑ん
で言った。


僕は、上手に笑えて
いただろうか?


視界がぼやけて、頬
を温かいものが流れ
て落ちた。


僕の顔を嬉しそうに
見た後ーー深く息を
してーー朱里は瞼を
閉じた。


『…朱…里…?』


固く閉じた瞳は、二
度と開いて、僕を見
るコトは無くーー。


僕は、朱里を失った
と言う現実に、暫し
呆然としていたけれ
ど…。


ーー白ーー


『…朱里?』

僕の身体の中から感
じた朱里の気配。

細胞の隅々まで朱里
に充たされていく。
内側から抱きしめら
れている感覚に戸惑
う。

…まるで朱里と繋が
っている時みたいだ
った。

そして心に優しく暖
かな愛が灯る。

胸の中に朱里の花が
咲き誇る。

…ああ、そうなんだ
ね、朱里。アナタが
僕の中で生まれ変わ
ったんだ。


僕は朱里の存在を確
かに感じていた。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫