《MUMEI》

あれは確か中3の冬


私はいじめられていた
今となっては普通に話してくれる美沙も

当時はそこまで私を好んではいなかったと思う


そして雪のちらつく日に誠一はやってきたんだっけ


あの時はまだ今より幼くてバカに見えた

「どうも!澤橋誠一です!なんか中途半端な時期に来ちゃったけどよろしく!」

私はその時初めて前を向けた気がした
誠一の声が心まで浸透していくのがわかったんだ
そして
「じゃあとりあえず澤橋の席はそこだな」

先生が指差した席はクラスの端である私の隣だった


「はーい」

誠一は返事をすると私の隣の席に座った

私が誠一を見ると
「よろしくね!誠一でいいから、おまえは?」

いきなり声をかけてくれて
そんな誠一の瞳はとても澄んでて
私を睨んできたどんな人達よりもきれいで
吸い込まれそうだった
「私…加納亜依…」

「わかった!よろしくな!亜衣!」

私は思わず顔を上げて誠一の顔を見てからやっと気づいたんだよね


これが恋心なんだって

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