《MUMEI》
オランウータン 1
あるとき、アイは、マキを自宅に招きご馳走を振る舞った。
マキはまたドッキリかと警戒したが、どうやら大丈夫そうだ。
しかしワインを出されると、マキは少し口をつけるだけにした。
すかさずアイが笑顔で睨む。
「マキ。眠り薬でも入ってると疑っているの?」
「いえいえ」マキは焦った。
「じゃあ信用の証にグイッとあけなさいよ」
マキは仕方なくワインを一気に飲みほした。
「ああ、飲んだ!」
「え?」
喜ぶアイを見て、マキは不安になった。
「マキ、眠り薬は効いてきた?」
「嘘でしょ?」マキは慌てた。
「大丈夫よマキちゃん。目が覚めたときは素っ裸だから」
「アイさん」マキが怖い目で睨む。
「しかも研究室の男性たちに囲まれてる」
「そんなことしたら絶縁ですよ」
「ジョークよ」アイは笑った。
眠り薬は嘘のようなので、マキはホッとした。
「ところでマキ、泳ぎは得意?」
マキは再び警戒した。
「何ですかいきなり?」冷や汗をかくマキ。

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