《MUMEI》 オランウータン 8アイは熱心にマキを口説く。 「二十歳の日本人女性がただでアマゾンの奥地を探検できるのよ。この経験は必ず今後の人生にプラスに働くわ」 「生きて帰れたらの話ですね」マキが冷たく返す。 「そこまで危険なところじゃないわよ」 「怖いですよ」マキは口をすぼめた。 「そんなかわいいこと言わないで。科学者でしょ?」 「たまごです」 「いつまでたまごでいる気? 10年後、20年後?」アイが責めた。 「いやあ…」マキは大きく首を曲げる。踏ん切りがつかない。 「この千載一遇のチャンスを無にする気?」 「オランウータンに襲われたらどうします?」 「オランウータンは人間を襲わないわ」 「なぜそんなこと言いきれるんですか?」マキが返す。「人間語話すなんて、宇宙人かもしれないじゃないですかあ」 「宇宙人かあ?」アイは腕組みして考えた。 「ジョークですよ」 前へ |次へ |
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