《MUMEI》

「秀幸とはもう20年近い付き合いだけどあれ程変わらない奴はいないね、不細工で不細工だし、不細工だもんなあ」

「アハハ…」

そうかな。お世辞にもカッコイイっては言えないけど、そこそこだとは思うんだけど。
つかあの年齢からするとスタイルいいし、そんなにオジサンぽくないし。

「でも不細工のくせに昔っから美人とばっかり付き合っててさ、自分の顔全く見てないってやつ?」
「え?伊藤さんって面食いなんですか?」

「いや、そうじゃないんだよ、なんだか知んないけど自然に美人が寄ってくんだよな、あ、あれか!引き立て役にされてんのか!
あ、今頃気がついた」

「アハハ…」



佐伯さんは本当に伊藤さんが好きなんだな。
こんなに長い付き合いのダチってなんか羨ましい。



俺も裕斗とそうなれるだろうか?
色々あったけど、上手く消化して、伊藤さんと佐伯さんみたいな関係になれるだろうか?















佐伯さんは俺をマンションまで送ってくれた。
車もカッコイイけど、佐伯さんの運転中の仕草の一つ一つがもっとカッコよくて俺は多分、キラキラした目で佐伯さんを見つめっぱなしだった。






「今日はごちそうさまでした、しかも送ってまでいただいてありがとうございました」

俺は外から、運転席にいる佐伯さんにペコリと頭をさげた。


「いやこちらこそ楽しかった、また食事しましょうね」


「はい!喜んで!また誘って下さいっ!」

俺はまた折目正しく頭を下げた。


「はは…、加藤君…、ちょっとこっちに…」


「はい」


佐伯さんに手招きされ、俺は一歩佐伯さんに近寄る。



グイッ!


「!!!!」











「おやすみ」









けたたましい音をあげて立ち去るポルシェ。


俺はそれを、ただ呆然と見送る。




「惇」


「…、あ…」



振り返ると




「…隆志」




見られた??



「今の誰」





「……、…佐伯…、陸さん…」



「佐伯陸…」


そう言いながら隆志は俺を胸に引き寄せた。


「隆志?こんなとこで…、ンッ…」


顎を一瞬で持ち上げられ、唇を塞がれた。
しかしそれは一瞬で離れてた。

「プハッ!いきなりもうっ!」
「消毒だ馬鹿!もう二度とあいつに会うな!佐伯陸はな!美青年喰で有名なんだぞ!」

「へ?」

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