《MUMEI》
遠き日の記憶
.


『いけない』と判っているのに、気持ちがついていかない。


こんな感情、間違ってる。


判っているのに、何故、隆弘への想いが日に日に募ってしまうのか。


この先、わたしはどうすればいいのか。



全く、見当がつかない………。





―――そんなふうに、悶々と思い悩みながら、



例の、高校の同窓会の日を迎えた。





わたしは仕事を終えた後、急いで会場となっているバーへ訪れた。急に残業になってしまい、定時で帰ることが出来ず、途中参加することとなった。


わたしが到着した時にはすでに飲み会が始まっていたらしく、皆、バカみたいにはしゃいでいた。

「お疲れ〜」

いち早くわたしの姿を見つけた亜美は、いつものように屈託なく笑いかけた。わたしも微笑み返し、彼女の元へ向かう。

テーブルには亜美の他に何人かの女の子達がいた。懐かしい顔触れに、わたしも感傷的になる。

「元気だった?」

「今日、仕事?何してるの?」

「あ、何か頼む?ビールでいい?」

矢継ぎ早に質問を繰り返す彼女達に答えながら、どこかから視線を感じて、わたしは顔をあげた。

少し離れたテーブルに、男子のグループがいて、わたし達の方を見ては、ニヤニヤと卑しく笑っていた。その輪の中心にいる人物に、わたしは見覚えがあった。


確か、中沢君。

高校時代、割りと仲が良かった男子だ。


それに気づいて、わたしは少し気分が悪くなり、目を逸らした。
亜美もその空気に気づいたのか、あからさまに眉をひそめる。

「中沢も来ててさー。さっきからずっとあんな感じ。ちょー空気悪い」

ぶつくさ文句を言う彼女に、わたしは笑うだけで返した。


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