《MUMEI》 . その様子を眺めたまま、わたしは続ける。 「それに気づいた瞬間、涙がバーッて溢れちゃって、苦しくて苦しくて仕方なかった…そうしてやっと判ったの、わたしはまだ、モトを忘れられないんだって」 また、笑い声が響く。 亜美はわたしに身体を近づけて、「そう…」と呟いた。 「そうだったか。元治先輩ね…」 「…しつこいよね?」 「そんなことないけど…別れて何年だっけ?2年?」 「3年…もうすぐ4年になるね」 「4年か…」 亜美は「…長いね」と呟くと俯き、少し考え込むようにしてから、またわたしの顔を見た。 「先輩と連絡取ってるの?」 尋ねられて、わたしは「全然」と答えながら、小さく首を横に振った。亜美は不思議そうな顔をする。 「どうして?まだ好きなんでしょ?」 理解出来ないと言わんばかりの口調だった。わたしは首を傾げて、「好きだけど…」と曖昧に答える。 「今さら連絡して、何て言えばいいの?」 わたしの問いかけに亜美は、「簡単じゃない!」と呆れたようにため息をつく。 「自分の気持ちを、素直に言えばいいの。『今でも好きなんです』って、それだけでいいんだよ」 わたしは亜美の顔を見た。そして、「…無理だよ」と、首を振る。 「そんなの言ったって、意味がないよ。届くわけない」 「どうして?やってみなきゃ判らないじゃない?」 「判るよ」 「どうして?何が判るの?」 終わりが見えない、堂々巡りの会話にいい加減苛立ってきた亜美を、わたしは真っ直ぐ見つめ返して、「判るよ」と繰り返した。 「モトはわたしのこと、好きじゃない」 …きっと、最初から。 初めて向き合って話した、あの瞬間から、 恋が走り出したのは、わたしだけで、モトの気持ちは、それに追いついていなかった。 …いや、 追いかけようともしてくれなかったんだ。 ****** 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |