《MUMEI》 数学の授業。 俺は数学が一番好きだし、自分で言うのもあれだが得意科目だ。 この日、数学教師が持ってきた課題は難問だった。 どっかの難関大学の二次試験で出題されたらしいこの問題は、1年生の学習範囲で解ける問題なのだと言われた。 しかし「2単元3公式を駆使する」と言うヒントをもらっていても、なかなか簡単には公式が見付からない。 数学の村上は、いつもこうやって一癖以上ある問題を持ってきては放置し、授業の最後10分で答え合わせと解説をする。 それまでの40分、苦戦している生徒達をニヤニヤしながら視ている。 完全ドS。間違いない。くっそ。 と、頭の中では悪態ついても、俺は一応優等生な訳だから、それをいつもあきれ顔で見ている。 ――しかし、今日の問題は難しいな…うっかり問題への集中力が散漫になっていたか… あ、この公式じゃなくて応用からのを… やっと納得のいく解答を出しシャーペンを置く。 すぐに公式を見付けられなかった憤りもそこそこに、強敵を倒した満足感に浸っていたら、村上が近寄ってきた。 「明智?まさかお前でもまだ解けないだろう。何休憩してんだ…。」 「は?終わりましたよ?一個違う公式はめて遠回りしましたけど、…なんとか時間内ですよね?」 ざわり… その言葉を聞いて、わずかに周りの空気が揺れる。 それと同時に腕時計に目をやって俺も固まる。 まだ、授業が始まって5分と経っていなかった。 前へ |次へ |
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