《MUMEI》
荒くれ男 2
ハーリーは、ギャングのボスのような風格がある。
ボリュームのあるパンチパーマはブラウン。目がすわっている。口もとに笑みをたたえ、マキを見すえた。
「ジャパニーズ?」
「はい」
堂々とした王者の雰囲気を醸し出すハーリーに、マキは気圧されていた。
落ち着きのある態度の中に怖さを漂わせた風貌。迫力がある。
短い金髪の男はマードック。
「マキか。かわいいな。よろしく」
マードックはきさくに挨拶すると、マキの手を握った。
「初めまして。よろしくお願いします」マキは顔を紅潮させてマードックを見上げた。
彼女は160センチある。日本では小さくないが、ハーリーやマードックと並んだら小柄なプリティーガールだ。
アイはマキより少し高かった。
「高校生か?」マードックがアイに聞く。
「失礼ね。二十歳よ」アイは苦笑した。
「ソーリー」
「いえいえ」マキは笑顔で両手を振った。
「ジャパニーズのレディはプリティーだから好きだ」マードックがフォローする。
アイは笑いながら言った。
「マキ。マードックのニックネームは狂犬よ」
「狂犬?」マキは目を見開く。
「余計なことを言うな」マードックが睨む。
「心配するな」ハーリーが口を挟んだ。「マードックは見た目は荒っぽそうに見えるが性格は凶暴だ」
アメリカ人三人は笑った。
(…笑えん)
マキの額に汗が光る。

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