《MUMEI》
荒くれ男 11
4人はドリンクを飲みながら談笑した。
「こんな素敵なレディが一緒なら、楽しい船旅になりそうだ」もともと会話が好きなフランクがマキを見つめる。
「そう言っていただけると嬉しいです。あたしも光栄です」
「ところでアイ」スタンが聞いた。「ほかはだれが行く?」
「ハーリーとマードック。あとビリーにダスティよ」
「ダスティ?」スタンの顔が曇る。「あいつは和を乱す。外したほうがいい」
マキは焦った。皆仲間というわけではないらしい。
フランクも言った。
「オレ一人でアフリカ象でも蹴散らしてやる。そんなに大勢ボデーガードはいらないだろう?」
「でもダスティはカメラの腕は確かよ。それにオランウータンの腕力は人間の10倍。侮れないわ」
アイが言うと、フランクが答えた。
「ダイナマイトキック一発でジ・エンドだ」
「動物に暴力はダメですよ」マキが言った。
「日本人は優しいな」スタンが頷く。
「皆さんだって優しいじゃないですか」
マキが笑顔で言うと、スタンが笑った。
「フランクが優しい? ガッハッハッハ。こいつのプライドに触って無事だった人間はいないぜ」
「い…」マキは笑顔のまま硬直した。
「大丈夫だ。レディには優しい」フランクが言った。
マキは思った。
8人の用心棒ではなく、8人の野蛮人と船に乗ることになる。
船は逃げ場がない。オランウータンよりも危険だ。
(…乙女の危機かも)

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