《MUMEI》 荒くれ男 114人はドリンクを飲みながら談笑した。 「こんな素敵なレディが一緒なら、楽しい船旅になりそうだ」もともと会話が好きなフランクがマキを見つめる。 「そう言っていただけると嬉しいです。あたしも光栄です」 「ところでアイ」スタンが聞いた。「ほかはだれが行く?」 「ハーリーとマードック。あとビリーにダスティよ」 「ダスティ?」スタンの顔が曇る。「あいつは和を乱す。外したほうがいい」 マキは焦った。皆仲間というわけではないらしい。 フランクも言った。 「オレ一人でアフリカ象でも蹴散らしてやる。そんなに大勢ボデーガードはいらないだろう?」 「でもダスティはカメラの腕は確かよ。それにオランウータンの腕力は人間の10倍。侮れないわ」 アイが言うと、フランクが答えた。 「ダイナマイトキック一発でジ・エンドだ」 「動物に暴力はダメですよ」マキが言った。 「日本人は優しいな」スタンが頷く。 「皆さんだって優しいじゃないですか」 マキが笑顔で言うと、スタンが笑った。 「フランクが優しい? ガッハッハッハ。こいつのプライドに触って無事だった人間はいないぜ」 「い…」マキは笑顔のまま硬直した。 「大丈夫だ。レディには優しい」フランクが言った。 マキは思った。 8人の用心棒ではなく、8人の野蛮人と船に乗ることになる。 船は逃げ場がない。オランウータンよりも危険だ。 (…乙女の危機かも) 前へ |次へ |
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