《MUMEI》

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元治は立ち去るわたしに何も声をかけなかった。代わりに、その一部始終を見ていたOB達が、ひやかすように声をあげた。

「あれ?モト、フラれちゃった?」

「お前、がっつき過ぎなんだよ〜!」

ゲラゲラ笑う外野に対し、元治は明るく笑って、「うるせーよ!」と叫んでいた。

恥ずかしさで顔を赤く染めながら、亜美達がいるテーブルに戻ると、亜美がニヤニヤしてわたしの腕をつっついた。

「何ナニ?元治先輩といい感じだったじゃん?」

亜美の言葉に、他の女の子達も混ざってくる。

「どうしたの?モト先輩、何て言ってた?」

「さっちゃん、コクられたの!?」

「マジでッ!?わたしだってセンパイとお近づきになりたーい!」

好き放題にからかわれ、わたしの顔はさらに赤くなる。

「ほっといてよ!」と、つっけんどんに返しながら、わたしは椅子に腰かけた。恥ずかしさで、元治の方は見ることが出来なかった。


じきに、飲み会は終了し、お店の外に出て、各自解散となった。

皆ダラダラと各々の家路につこうとする中、


「山本さん」


背後から、伸びやかな声に、呼び止められた。

紛れもなく、元治の声だった。


恐る恐る振り返ると、やっぱりそこに、満面の笑顔を湛えた元治が立っていた。

「話したいんだけど、ちょっといいかな?」

そう呟いて、にっこりした。わたしの胸が高鳴る。


…話?

一体、何だろう。


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