《MUMEI》

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亜美は荒々しくため息をつき、言い募った。

「先輩に未練があるなら、わたしも出来る限り協力する。でも、既婚者は認めない。わたしは知らないからね」

ハッキリ言い捨て、彼女はビールをあおるように飲んだ。

わたしは戸惑いながらも、言葉を紡ぐ。

「わたしは、モトのこと、もう信じられないと思うの…好きでも、もうムリって思ってる自分がいる」


―――元治と別れてから、3年。

愛しいと思う気持ちも、まだ残っているかもしれない。

けれど、

そこへ踏み込んでいくには、触れ合わなかった3年間は、あまりにも長かった。

その長い歳月が、わたしにそう思わせていたのかもしれない。


遠い目をして呟いたわたしに、亜美は間髪入れず、「それじゃあ…」と切り返した。

「その既婚者のことは信じられるの?」

鋭さを孕んだ声だった。わたしは俯く。


信じる。信じない。

ぐるぐると、様々な想いが、わたしの胸の中を交錯する。


込み上げる苦しいその想いを吐き出すように、わたしは「…信じたい」と、呟いた。

「…あの人は、わたしに真っ直ぐ自分の気持ちをぶつけてくれた。結婚してるけど、わたしのこと、好きだって言ってくれた」

嘘をつくことなく、自分が結婚していることを正直に話した隆弘。

ちゃんとわたしの目を見据えて、自分の気持ちを打ち明けてくれた隆弘。


間違っているかもしれないけれど、

彼のその姿勢が、誠実なものに思えた。


わたしの答えに、亜美は眦を鋭く光らせ、睨み付けた。

「そんなの、リップサービスに決まってるでしょ!不倫してる男は皆、同じこと言うわ!」

亜美はほとんど叫ぶように怒鳴り付ける。まるで聞き分けのない子供を叱るときのように。


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