《MUMEI》 (あんなふうに、別れちゃって以来だ…) 克哉さんと最初に出会った時も僕はただ、貰ったネームカードを眺めるだけで、僕から会いに行こうとはしなかった。 克哉さんが探しに来てくれなかったら、こうやって一緒に居られる事も無かったワケだ。 (自分のこういう所、何とかしなきゃいけないな…) 今度、お菓子でも作ってジェイミーに会いに行ってみようかな。 コレは浮気とかじゃなくて、ジェイミーとは友人だと今でも思っているけど、友人とあんな事するだろうか…。 そうだ…ジェイミーは僕の事好きでいてくれたのに、僕はそれに答えられていたのだろうか…。 今でもそれが心残りだった。 くるみちゃんの手を引いてリビングのドアを開けると、キッチンの方からほわんと良い香りが漂ってきた。 「あっ!トリスたんだ〜♪」 「メリークリスマス、くるみにあきら♪」 キッチンの方に目を向けてみると、やっぱり心配しなくてもトリスタンさんが夕飯の用意をしてくれていたらしく、オーブンからケーキを出してきている最中だった。 「ありがとうございます、本来は僕がやってなきゃいけないのに…」 「いいのよ気にしない、ほとんどデリバリーだし♪」 そう言うとトリスタンさんは裏返したカップの上にケーキ型を置いた。 何だろう…と思って見守っていると、型の底だけ残して周りがスポンと取れて綺麗にケーキを取り出していた。 (便利そうだなぁ…そんなものがあるんだ…) くるみちゃんを部屋着に着替えさせると、僕も着ていたコートを脱いでから一緒に手を洗ってリビングに戻ると、もうすでに全部準備が出来上がっていた。 「あの、克哉さんは?」 「ぁ…パパァ〜?」 「ん〜…もうすぐじゃないの?サンタさん」 「トリスたん!サンタしゃん来るのぉ?」 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |