《MUMEI》

.

唾を飲み込み、わたしは色々と悩みながら、震える指でメールを打ち、送信した。



******



to :タカヒロ
sub:Re:Re

――――――――――――

逃げたくなるよ。



******



送信が完了したのを見届けてから、わたしは携帯をテーブルに、ポンと放った。涙が出そうだった。

正直、もう放って置いて欲しい。先の見えない関係は、終わりにしたい。


しかし、わたしの想いに反して、すぐに隆弘から返事が送られてきた。



******



from:
sub :Re:Re:Re

―――――――――――――

待ってるよ。戻っておいで。俺は気にしません。



******



涙で視界が滲んでいく。胸が押し潰されるように苦しい。


『待ってるよ』

『戻っておいで』


根拠もないのに、どうしてそんな言葉を言えるのか、判らなかった。信じられなかった。

わたしはまた、返信する。



******



to :タカヒロ
sub:Re:Re:Re:Re

――――――――――――

友達が、用が済んだら捨てられるって言ってた。



******



送信ボタンを押し、携帯を閉じてすぐバックの中へ押し込んだ。

亜美は、直接的に『捨てられる』とは言っていなかったが、結局は同じことだ。



このまま、隆弘との不毛な関係に踏み込んでいけば、


いずれ、わたしは、捨てられる。


亜美はそう言いたかったのだろうし、わたしも同じ考えだった。



.

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫