《MUMEI》 ・・・・が、それは体現されなかった。その代わりに激しい痛みがファースの頭を駆け巡る。後ろから鈍器で殴られたような感覚にファースは頭を抱え崩れ落ちた。 「くっ・・・・なんだ、いったい」 振り払おうと頭を振るうが、痛みは増すばかりで一向に収まる気配はない。これが一体何を現わしているのかファースでもおおよその見当はつく。しかし、それを認めることはどうしてもしようとはしない。 認めることは今回のことが失敗に終わることに直結するからだ。 「君は相当な考えなしみたいだ。あれほど奇怪な能力、何らかの負担がかかるとは考えなかったのかい。君の軽率な行動が招いた当然の結果だよ」 哀れむような視線を向け余裕の表情を見せるアランだが、心のなかではヴィヴィアンから譲り受けた不思議な石を使わずに済みそうな状況に安堵していた。 ファースの眼は人間の身には不相応な力といえる。そのため、ファースの意思とは関係なく無意識化に抑え込んでいるのだがファースはその防護処置を無理から外そうとした。そのため危険信号が発せられたのだった。 前へ |次へ |
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