《MUMEI》

コンコン…ガラッ

「山田先生?明智です…」


準備室内を覗くと、天井の方をキョロキョロと見渡す細身で白衣の男が立っていた。

「…先生?」

「あぁ、突然ごめんな。適当にその辺の椅子に座って?インスタントで良ければ、コーヒーあるけど、飲む?」

「…ビーカーじゃなければ頂きます。」

「誰がビーカーで飲むか。ビーカーに色素沈着しちゃうだろうが。」



笑いながらポットとカップのある棚の前に立つ山男は、丁度その棚の上段に置いてある鉢植えの花が、頭から生えているように見えて、それがとても様になる柔らかい雰囲気を持つ先生だった。


『あー、この先生なら見たことあったな…なんだよカールおじさんじゃねぇじゃん。』


なかなか失礼な事を考えていた明智に、山男はにこやかにカップを差し出す。

「はい。砂糖とかミルクは?」

「無くても飲めます。」

「すげーな。俺砂糖もミルクも3杯は入れないと飲めないや。」


本当は、少し無理をしないと苦くて飲むのはつらいのだが、なんとなくこの先生の前では見栄を張ってみたかった。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫