《MUMEI》

(そうだった…)

今日は克哉さんがサンタさんになってプレゼントをあげるんだけど、その姿が見えなかったからついうっかり克哉さんの名前を言ってしまった。

「…パパは?」
「う〜ん…ど、どうしたんだろうねι」

うっかり”克哉さん”なんて言ってしまったものだからくるみちゃんが気になり始めてしまったらしい。

(どう言ったらいいんだろうか…ι)

クリスマスとか…僕は海外の行事というものに慣れてなくて、こういう時の上手い切り返しに何を言っていいものか、全く思いつかなかった。

助け船を求めてトリスタンさんの方を向いたら、トリスタンさんはクスクス笑いながら僕の方を見ていた。

(わ…笑われてる///)

くるみちゃんはポカーンと僕を見上げてるし、トリスタンさんは笑ってるし…。


『フォッフォッフォ〜…』
「!!」

突然、場の空気を変えるように僕らの背後の廊下の方から、聞き慣れた低い声だけど、妙なテンションの声が聞こえてきた。

「あー!!幼稚園で聞いたシャンたしゃんのお声に似てるの〜!」

くるみちゃんはそう言うと、僕の腕をすり抜けて大騒ぎしながらその声が聞こえた廊下の方へ走り出していった。

「ありぇ〜ドコなの?ヴォイストゥ(どこにいるの?)シャンたしゃ〜ん?シャンたしゃ〜ん?」

くるみちゃんがさっき声のした方を探しながらウロウロと部屋の周りを走り回っていた。

(…克哉さんだよね、出てこないのかな?)

「サンタさ〜ん、出てきなさ〜い♪」

見かねたトリスタンさんが扉の向こうに向かって呼びかけると、ゆっくりとくるみちゃんの部屋のドアが開いた。

「……ぅきゃ〜♪♪」

こちらを伺いながら顔を出してきたあの見慣れた身長に赤い衣装を着たサンタさんを見つけると、くるみちゃんは子供特有のあの甲高い声を上げはじめた。

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