《MUMEI》
アニマル 2
車はトレーニングジムの駐車場に止めた。
「ホークとアニマルは暇さえあればトレーニングしてるわ」アイが呆れた口調で言った。
「パワーリフティングの選手なんだから、トレーニングは仕事なんじゃないんですか?」
アイは一瞬真顔でマキの顔を見ると、笑顔で腕を触った。
「マキ、あの二人と合うかもしれない」
車を降りる。ホークが短気と聞いたので、マキは緊張した。
彼女たちはリビングで少し待った。そこへ、カラフルなTシャツ姿の大男が二人現れた。
良く言えば海賊。二匹の獰猛な人食い虎が歩いてきたような迫力に、マキは目を見張った。
「おお、アイ、久しぶり! 相変わらずSか?」
マキは早くも焦った。身長を聞いていたから、背の高いこの男性がホークだとわかる。
「オレはMが好きなんだ」
「まあ、待って」アイは笑顔で両手を出しホークの勢いを止めると、マキのほうを向いた。「紹介するわ。マキよ」
「マキ?」ホークが笑顔で睨んだ。「ジャパニーズか?」
「はい、あの、初めまして。よろしくお願いします」
「ヨロシク」ホークは答えると、アイを見た。「かわいいじゃねえか。思わずベアハッグしたくなるな」
「ベアハッグ?」マキが聞いた。
「何でもないのよ」アイが笑顔でごまかす。
「何ですかベアハッグって。教えてください」
怖い顔で睨むマキの細い腰に、アイは両腕を回してサバ折り!
「痛い! 何するんですか?」
「ベアハッグよ」あっさり言った。
「日本帰ろ」
「何か言った?」
「独り言です」

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