《MUMEI》 ふっと、山男が天井の方を再び探り始めた。 様に、明智には感じた。 山男は一貫して明智と目は逸らそうとはしなかったし、天井の方を探った。と感じた時も、ばっちり視線は合っていた。 ただ、周囲を取り巻く隔たりが、なんとなく、山男の力に因って外側にある生物準備室の天井付近まで拡張されたのを感じ取ることが出来た。 しばらくそのままの状態が続いていたが一向に山男は目を離すことなく、言葉を紡ぐ事も無かった。 慣れたとは言え、違和感を感じたまま、さらに山男がこちらにいるというイレギュラーに嫌な緊張の続いていた明智がしびれを切らして、口を開いた。 「先生?」 その言葉を聞いた山男は、口元だけニコリと笑う。途端に、2人を包んでいた空間がぱん!と解放された。 「!!?」 明智は、突然の解放のショックで身体をビクリと跳ね上げる。 「驚いたな…もう、声を出せるくらいにまで力を貯めているとは…」 「…???」 明智はこの時初めて、隔たりの中から抜け出した際に、時間が動き出したことを実感した。 緊張状態から抜け出したせいか、心臓がばくばくと脈打ち、呼吸が荒く、目の前が軽くかすんでゆく。 たまらず、山男の目から、視線を逸らして椅子の上でうずくまった。 前へ |次へ |
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