《MUMEI》

「だ、大丈夫か?明智?おい。うわ、やっべ…」


近くで山男が慌てているのをぼんやり感じながら、明智はなんとか落ち着こうと深呼吸を試みた。

額にうっすらと冷たいモノが触れ、窓を開けたのか、わずかに新鮮な空気を感じる。


「…ち?明智?おい?意識はあるか?明智?」



「う…せんせ?」

「あぁ、戻ってきた。良かった。うわー。ごめんなー。こんな風になるなんて思わなかったから。」


額に当たる冷たいものは、濡らしたタオルか、ハンカチか。

いつの間にか、明智は椅子に座った状態で、上半身をすっかり山男に預けてぐったりしていた。

「ん…もう、大丈夫です。すみません。」

視界が回復したところで、山男の押さえていたタオルをそのまま手で受け取り、身体を預けていた体勢から、自分で椅子に座り直す。

「まぁ、俺もなんとなく経験あるから…一過性だとは思うけど…こんな酷くなかったからな…やっぱりちょっと早かったかな…」


山男の言葉で、やはりさっきのは山男が自ら作り出したと核心する。

「…一体、さっきのは何ですか?俺に何したんですか?」

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