《MUMEI》

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高校時代、中沢君はバスケ部で、元治の後輩だった。



わたしは元治の姿を見たくて、バスケ部の試合にあししげく通っていたのだが、中沢君はそれをクラスメイトだった自分を応援しに来ていると勝手に勘違いしたらしい。ある時、彼から告白されて、そのことを知った。

もちろん、その申し出を断ったのだが、それ以来、中沢君はわたしのことを目の敵にしていた。しかし、高校を卒業してしまうと関わることもなくなり、今日、こうやって再会するまで、彼との面倒なイザコザのことなんて、すっかり忘れてしまっていた。


口では亜美を制止させていたが、中沢君が口にする心無い言葉の数々に、当然、わたしは憤っていた。怒りや恐怖や屈辱感が一斉にわたしの中を駆け巡り、気を赦せばすぐにでも彼に掴みかかって、殴り倒したいと思う程に。


それでも、今は耐えなければ、と必死に自分に言い聞かせていた。


時折、中沢君がわたしの方へ視線を流しつつ、聞こえよがしにあんなことを言っているところから、わたしを挑発しているのは明らかだった。


ここでまんまとわたしが怒り出せば、中沢君の思う壺だ。



…我慢するんだ。

相手にしちゃダメだ。

聞き流せ。何を言われても無視するんだ。



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