《MUMEI》

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しかし、わたしが黙っているのを良いことに、中沢君は「あんなつまんねぇ女、付き合う価値ねーよ」と、調子づいて笑った後、



「元治先輩も、趣味ワリィよな」



―――続けざま放たれた、その台詞に、


わたしはつい、勢いよく椅子から立ち上がった。ガタンッと荒々しい音が会場に響く。


皆、シン…と静まり返り、わたしに注目する。中沢君も、わたしを見つめていた。


彼はわたしの強張った顔を見て、「あれぇ?」とふざけた調子で笑った。

「もしかして、今の話聞こえちゃったぁ?」

明らかに悪意のある言い方に、亜美がいきり立って、「あんたねぇ、いい加減に…!」と噛みつきそうになったのを、わたしはまた止めた。

わたしは亜美の顔を見つめ、微かに頭を振る。何も言うな、と視線だけで訴えた。

亜美はそれとなくわたしが言わんとしていることを察したようで、ただ、黙って苦しそうに眉をひそめた。



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