《MUMEI》 VS 2 Kitchen trapper「何、作ろうかな」 処代わって、台所 其処にあった冷蔵庫を爽快に開け放ち、中身を睨みつけながら 岡本は夕食のメニューを色々と思案していた 男4人が食べる食事 料理は割と得意とする岡本ではあるのだが、一体何を作ればいいのか 全く見当がつかずにいた 「……大体、何で冷蔵庫だけこんな立派な訳?」 殺風景な台所の様子から、誰かが進んで料理をしていた痕跡はない ならこの無意味に巨大な冷蔵庫には一体何が入っているのか 開いて見れば 「牛乳に卵、か。割とまともなんだ」 だがすぐ後 岡本はその言葉を早々に撤回する羽目になった 「……でも、この大量の食パン、一体何なんだろ」 冷蔵庫のほぼ全体を占めているパンのソレに 岡本は訝しげな表情を浮かべながら一つずつ出してみる事に 一つ、二つ、三つ 出せども出せどもその終わりが見えては来ず 一体どうなっているのか、井上が叫びだしてしまうその寸前 その井上の背後に人の影が立った 「何してんだぁ?タマ公」 突然に声をかけられ、岡本は驚きに身を竦ませる その声へと向き直ってみれば、そこには缶ビール片手に食パンを齧る平田の姿が 「ひ、平田、先生……」 つい先の騒動があった所為か、つい身構えてしまえば その岡本の様に、平田は僅かに肩を揺らした 「そんな怯えてんじゃねぇよ。お前って最高に面白い奴だな」 「何それ!?」 「そうそう、それだ。そういう反応が堪んねぇんだぜ。タマ公」 言い終わると同時 岡本の口へとくわえさせ、文句を途中に いきなりのソレに慌てるばかりの岡本に 更に平田は笑う声を上げていた 「……もう!何すんのよ!」 「お、凄ぇ脹れっ面。やっぱ面白ぇ……」 文句を返せば返す程、平田は笑うばかりで この男には文句を言っても無駄の様だと、岡本は溜息をついた、その直後 唐突に手首を掴まれ、そのまま平田は岡本を連れ外へと出て行く 「な、何?どしたの!?」 一体何所へ行くのか問うてみて、だが返答はなく 岡本はそのまま引っ張られて行くしかない そして向かったのは寮の裏口 出てみた其処には 一面に広がる野菜畑 様々な種類のそれらが其処にはなっており、岡本は物珍しげに眺め見る 「すごい、野菜だらけ……」 「何だよタマ公。お前、畑仕事とかしたことねぇのかよ?」 「少し位ならしたことあるけど、こんなに大きい畑は初めて」 「へぇ」 意外そうに頷き、だがすぐに平田は肩を揺らすとその場にて膝を折る そして何かを取ると、それを岡本へと放り投げてきた 「な、何……?」 いきなりのソレを慌てて取って見れば 「イチゴ……」 ソレは真っ赤に熟したイチゴ 近くにあった蛇口でそれを洗うと、一口食べてみる 「美味しい」 程良い酸味と甘みに 苺好きの岡本の顔は笑みに緩んだままだ 「……テメェはガキかよ。ま、食いたけりゃ食え。脚元に沢山生ってっから」 「脚元?」 言われて下の方を向いて見れば その言葉通りに大量の苺が皆程良く熟していた 「……すごい、沢山」 何処を見回しても苺ばかりで 岡本の顔が益々楽しげなソレへと変わっていく 「お前、料理得意だったりする?」 夢中で苺を摘む岡本へ、平田からの問い掛け 行き成りなソレに岡本は首を傾げながら 「一応は得意なつもりだけど、どして?」 苺を摘む手を止め、平田を見上げてみれば どうしてか彼らしからぬ困った様な顔で ソレを岡本は更に追及してみる 「……菓子が食いたくなったんだよ。文句あんのか?」 「お菓子?この苺で?」 意外なソレに、岡本はつい笑ってしまいそうになったが何とか堪え わざとらしい溜息をついてやりながら 「……仕方がない。作ってやるか」 平田が持っていたカゴへと摘んだ苺を山積みに入れると 岡本はソレを抱え家の中へ 台所へと入れば、その後を、平田も何故か付いてくる 「……何か、企んでる?」 「何の事だかな」 警戒につい恐々問うてみれば だが返答はなく、はぐらかされてしまう 「ねぇ……」 「何だよ?」 「……腕、離してほしいんだけど」 台所へと入るなり岡本の身体に回された平田の腕 すっかり抱きしめられている状態になってしまっている事に異を唱えてみれば 嫌だと端的な答えが返ってくる 前へ |次へ |
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