《MUMEI》
出発の朝 8
ダスティはマキを追いかけ回す。
「オレの体重で君の生活に何か支障をきたしたか?」
「キャー!」
「きたすぜ」ホークがまた絡む。「ダスティは絶対船の真ん中にいろよ」
「どういう意味だ?」
「ダスティの体重で船が傾くからだよ。テメーが端に行くたびに船がどすこーい、どすこーいってシコ踏んじゃうだろ?」
「泣かす!」
ダスティが掴みかかる。マキが止めた。
「やめなさいって本当に」
「いくら日本人が乗るからって相撲を持ち込むことはないぜ」
「まだ言うか?」
「そろそろ出発するぞ」ハーリーが大きい声を出した。
ダスティはホークの服から手を放す。
ハーリーは一団をひと睨みすると、言った。
「テメーら。船の上で喧嘩なんかしたら、川に放り込むぞ」
マキはヒヤッとしたが、だれも逆らわずに、皆荷物を持って船に向かう。
(…やっぱりギャングのボス?)
マキも覚悟を決めて船に乗った。

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