《MUMEI》

「ふーん、綾乃ちゃんて、なんや色々面白そうやねぇ。」


にこやかに笑う彼の瞳の奥の光に綾乃は気づかない。

「ごちそうさまっ!美味しかった〜。何なら今から一緒に瀧、を…」


ベンチから勢い良く立ち上がった綾乃は不意に目眩に襲われた。


「あ、れ?眠…い……」


そうして倒れ込んだ綾乃を黒烏は苦もなく受け取る。

「あらら、かわいい眠り姫いっちょ上がりー。」


そうして両手で綾乃を抱き上げ、物陰に移動した。


「レイヴン。」


声に応えるかのように足元から一陣の風が上がると共に頭上に大鴉が出現した。

「さぁ、ステージゼロ開始や。王子様はお姫様助けに来れるかな?」


ニヤッと笑いレイヴンに乗る。


そうして、彼は飛び去った。

街のすぐ近くにある廃ビルに向かって。

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