《MUMEI》

「フェルは似たような人間を好む事はあっても、選んだりはしない。学校憑きのフェルが、試験会場に好みの子がいたからって、勝手に試験結果変えて、高校入学決めるわけにはいかないだろう?気に入らないからって、退学にすることだってそうだ。
サプリから聞いた話だと、人間の方が、サプリの力に惹かれてやってくるらしいから。サプリが選んだんじゃない。俺だって、サプリ本人の性格とは相容れないけど、結局、就職してまたここに来た。
そうとう無意識下で、サプリの事が気に入ってるんだよ。俺の身体が。」

「分からない。…それから、兄さんと話をしてるって、兄さんもサプリとかフェルとか知ってるんですか?」

「知ってるも何も、俺をこっちに引き込んだのも善彦だからな。」

「え…」

「分からないかぁ。例えば、同じ学校でも、学年によって色があるというか、雰囲気が違ったりするだろう?
高校入って、色んな中学出身のヤツと知り合って、個々人まったく性格違うはずなのに、なんか、○○中っぽい。って感じたら、当たったとか、経験ないか?その辺がフェルの気質とか雰囲気なんだと俺は思っているんだが。」


まだ話を続ける山男の声を半分聞きながら、明智は既に他の事が気になって仕方がなくなっていた。


「兄さんも、って、兄さんもこの不可思議現象に遭っていたって事なんですか?兄弟だから?」

「フェルについては飽きたか。」

「もう、俺そこまで仲良い友達とかもいないんで、良いです。そういうもんだ、って聞き流すことにしました。」

「…善彦と俺は、高校2年の時に、サプリのスレシルになった。」

少し面食らった様な顔をしていた山男は、すぐに困ったような顔で微笑む。


「すれしる?」

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